「月刊 手技療法」という雑誌の創刊の頃、
オステオパシーの創始者 A.T.Still先生の自叙伝が連載されていました。
そこからの一部をどうぞ。
「少年時代の体験に関する本章の締めくくりとして、一つの出来事についてお話ししよう。
この体験は単純なことではあるが、
私にとってオステオパシー科学の最初の発見ともいえることなのだ。
私は小さい時分からすでに薬嫌いになり始めていた。
十歳頃だっただろうか、ある日頭痛に見舞われた。
父の耕地にある2本の木を利用してブランコをして遊んでいたが、
頭痛がするのでブランコは全然楽しくない。
そこでロープを地上20センチから25センチ位にまで下げ、そこに毛布の端をかけた。
私は地面に横たわりロープを揺れる枕にした。
そのようにして首をロープにかけて地面に仰向けに寝た。
すぐに体が楽になって眠ってしまった。
しばらくして目が覚めると痛みはすっかり消えていた。
この時は解剖学の知識が全くなかったので、
なぜロープが頭痛とそれにからむ胃痛を和らげる働きをするのかについては深く考えなかった。
この発見があって以降は、
痛みがやってくるといつも首にロープをかけたものだ。
この療法を20年ほど続けてみてようやく原理がわかった。
つまり、
たくさんの後頭部神経の働きが一時止まり、
静脈へ循環する動脈血の流れに調和が生まれ、
これが安らぎの効果を出していることがわかった。
このことは読者諸君もご理解いただけると思う。
私は子供の頃から50年以上も、
安らぎと健康を作り出す生命機構の働きについてとことんまで解明したくて研鑽を積んできた。
今日私は50年にわたる研究の成果として、
『動脈は生命・健康・安らぎの川であり、
これが泥のようになったり汚染されると病気が起こる』ということに確信を抱いている。」